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ラスベガスへ行った話 |
第 5 話 樫村 慶一 |
≪ショッピング≫ ラスベガスはカジノの街ばかりではなく、国際会議などの硬い催し物も日々絶えることがないようであるが、やはり、米国人、外国人を問わず大半の人々にとっては、やはりそこにいることを楽しむ場所であり、買い物を楽しみ、食事を楽しむ街であると思う。ショッピングのポイントはあちこちに沢山あるが、それぞれが特徴を持っている。しかし、1ヶ所でゆっくり見て買い物をすると、1ヶ所で半日は悠にかかってしまい、くたびれて、それ以上は回る気がしなくなる。私達家族が泊まっていたホテル・ベラージオの中にも「ビーア・ベラージオ」というブランドの店ばかりが並んだガレリアがある。店の数は僅か11店しかないが、エルメス、シャネル、グッチ、ティファニ、プラーダ、ジオルジオ・アルマーニ、ディオール、イブ・サンローランなどなど、セレブで豪華な店揃いである。大体の店が日本語を話す店員を置いている。値段も超一流で、日本では、”ただ見るだけ” というようなものも、此処ではそれでは済まないのが旅の怖さであり、女達にとっては楽しみでもあろう。 ホテル・ベラージオの北側に、「シーザーズ・パレス・ホテル」があり、その中に、「フォーラム・ショップ」 と言うラスベガスの超一流ショッピング・モールがある。先日オープンした原宿の旧同潤会アパート跡のセンターのように、中央が吹き抜けのアトリュームになっていて、日本メーカー製の”螺旋エレベーター」が動いている、ここは、シーザー・パークと言うようにイタリア調のホテルであり、店もイタリア風の店である。私達は明日は帰国と言う最後の日に、ゆっくり歩いて、じっくり品定めをした。 ガイドによると、此処は今やラスベガスを代表するショッピング・センターになりつつあると言う。ローマの街並みをイメージしたという空間は芸術的で美しく、荘厳な柱やフレスコ画は圧巻である。此処の話題の極めつけは、「空の様子が変わる天井」であろう。天井が朝の夜明けから昼間、そして夕焼けになり、ついには陽が落ちて夜が訪れるまでに変化する。其の天井の下には、ローマのトレビの泉が作られている。この他にも、噴水広場の真ん中にどっかり座っている石像が、突然”ふにゃふにゃ”と音楽に合わせて動きだす見世物がある。単純だが遊び心が溢れていて、いかにもラスベガスらしい。 米国で売られている品物にも「中国製」が沢山あるのに改めてびっくりした。中国製の繁殖は恐るべき勢いで、シャツや帽子などの雑貨からホテルで行っているショーのグッズ、人形類、土産の小物類などなど、黴菌のイウルスも此処までは入り込まないだろうと思う程に侵食している。なんと恐ろしい国だろうと改めて驚き入った次第である。ラスベガスには色々な国をイメージする名前のホテルがあるが、みなその国の名前に因んだイメージを備えていて、店構えだけでなく売っている品物までも、其の国のブランドで占めている。ホテル・ベラージオの向かい側にあるパリ・ホテルのアーケードは、あたかもパリの一角にたたずんだような気分にさせてくれるようになっている。また、アラジン・ホテルのアーケードは、名前のようなアラビア風ではあるが、人が少なく何となく寂れていて、他の賑やかなホテルから来てみると、侘しいばかりである。 ネオンツアーで連れて行く日本人経営の日本人向けの土産物店は、チョコレートを5個買うと1個おまけとか、安物の飾り物とか、キーホルダーだとかを一所懸命に売りつけるが、来たばかりの日にいきなり土産物店に連れていっても、誰もが明日から観光や買い物をしようというのに、いきなりの店で買うわけがない。観光会社の作戦は失敗のように思える。 郊外近くに、プレミアム・アウトレットのマーケットがある。東名高速道路の御殿場インターにあるアウトレットの元祖のようなものだ。観光バスがわざわざ此処まで連れてくるにはそれだけのメリットがあるのだろう。やはり服飾品の有名ブランドの店が中心になっていて、中に家庭用品とか化粧品とか雑貨屋とかレストラン、スナックなどが混在している。ポロ・ラルフ・ローレンの店でメキシコ人を捉まえた。米国では、スペイン語圏の人間がごまんといるのに、彼らはスペイン語を使うのは肩身が狭いと感じているようで、努めて英語を使う。顔つきを見てこちらから、”スペイン語を話すか”と聞くと、にっこり笑って、”シー・セニョール”とくる。こうして会話が弾み、その結果、柄が気に入ったシャツだけとサイズがなかったのが、何時のまにか彼の手の上に乗っている、なんて思わぬサービスを受けられる。 同じく郊外には、有名なスーパーのウオールマットがある。広さや品数の多さには特に驚かないけど、スポーツ用品売り場のゴルフ用品と釣道具売り場にならんで、ピストルとライフルの本物が売られている。上野のあめ横のモデルガン屋にあるのと全く同じようなものだけど、見ているうちにゾーットしてきた。 ≪ショー≫ お遊びの街であるから、楽しみの元は数え切れないほどあり、優劣は簡単にはつけられない。中でも「ナイトショー」は、高いのから安いのまで色々あり、短時日ではとてもじゃないが、見切れない。従ってその印象を記述することは不可能である。それこそ、文字通り百聞は一見に如かずということになろう。私が見たのは、泊まっていたベラージオ・ホテルのゴージャスなショー ”O(オー)”である。舞台設備の不思議さ、舞台の豪華さ、演出の奇抜さ、アイデアの豊かさ、衣装や背景の美しさなどなど、どれをとっても天下一品、残念だけど、日本のショーで今までに見たものに、これほどの物はない。入場料も150ドルと、ラスベガスのあらゆるショーの中でも一番高い。全体は”水”をテーマにしたもので、舞台の池を巡って、天井から、水中から、周囲から水に飛び込んだり、浮き上がったり、ダイナミックなアクロバットの連続に、気を飲まれていると、途中でコミック劇が始まり、2時間15分たらずを全く飽きさせない。会話がないので、言葉が分からなくても困らないのが良い。一番の不思議は、舞台が水が溢れる池になったり、突如、床になったり、あっと言う間に変わる仕掛けである。しかも30メートルくらいの天井から飛び込むこともあるので、それなりに深さも必要である。建設費が9000万ドルも掛かったとか、の話しもあったけど、さもありなんと感心したものである。主だったホテルでのショーは、この”オー”の150ドルを始め20j台まであり、それぞれが特徴を持っている。これらの他にも、先に述べたような無料で開放しているショーも色々ある。 【写真説明: 上、ビーア・ベラージオにあるエルメスの店。 中上、ローマの街並みをイメージしたフォーラム・ショップの入り口。 中中、話題を集めている日本製螺旋エスカレーター。 中下、ショップ内の天井が夜明けから夜までの情景に変わる。 下、ホテル・ベラージオ自慢のショー”O”(オー)の舞台。水の池が忽ちステージに変わる。】 |
第6話へつづく |