ラスベガスへ行った話 |
第 3 話 樫村 慶一 |
≪ブッフェ、レストランなど≫ <ブッフェ> ブッフェとはフランス語で、現地の案内書によると、バフェイと発音しないと通じないと書いてあるがが、この言葉を使う機会が殆どなかった。どこの国でもどこのホテルでも、食べることには余り難しい言葉は要らないものである。朝食のブッフェへ行った。15分前に行ったらまだ誰もいない、しかし、5分前には30人位並んでいた。8時の開店になったら一斉に入れるのかと思ったら大違い、担当の女の子が一人(一組)づつ食券をチェックし、帳面に記録すると、別の女の子がおもむろに席に案内する、そうして、ようやく次ぎの人の受付である。早く来ていて良かったと家族と安堵した。 メニューは日本の洋食バイキングと大きな違いはない。洋食と称されるものは殆どある、ただ、ハムがない。ハムを使うべき料理は大体ベーコンである。味付けがやはり日本とは違うのは仕方がないし当然でもある。パンが固い。牛乳やジュースはビールの中ジョッキー位のコップに口すれすれまで入れてくる。何事もけちけちしないのが嬉しいけど、残すのがなんとなく癪でもある。 <レストラン> ホテルの中にはブッフェの他にも、簡単なサンドウイッチなどを食べさせる小さな店もあるし、売店でもパンや飲み物を売っている。そのほかにも、外部の経営するレストランがある。日本食レストランと称する「シンタロウ」も其の一つである。しかし、これらとは別に24時間営業しているホテル直営のレストランが1つだけあり、何時も行列ができている。入り口にはロープで3つのレーンが作られている。一つは一般の入店者が並ぶところ、真ん中はカジノで沢山使ってくれた客を優先的に入れるところ、残りは出口用である。ここのサービスも、なんとなくじれったい。長い行列ができていて、空いている席が結構あるのに入れてくれない。ボーイやウエイトレスの手が回る範囲でしか入れないようだ。入り口でコントロールしている女の子はそれだけが仕事のようで、仕事別にやたらに従業員が目立つ。注文も飲み物と食事とは別々の人が注文を受けるのだから、これまたじれったい話しである。メインの料理の他に、大皿にポテトチップとポテトフライを山盛りに持ってくるのには絶句する。1日がかりで食えとでもいうのか。パンだって3人分で15枚くらい来る。大柄な外人客達も3分の1位は残しているので、食べ切れなくても別におかしくはないだろうけど、なんとなくみっともない。コーヒーも大きなマグカップにたっぷり注いで、その他にポットに一杯いれておいて行く。牛乳、ジュース類も前に述べた通りで、残ったものは全部一緒で生塵になるのであろう。米国の塵処理は分別がないと聞いていたが、巨大な国の目も眩むような膨大な塵はどこへ行くんだろう。世界中から嫌われながらも、地球温暖化対策なんて糞食らえと言うのもさもあらんかなである。 <プライム・リブ レストラン> 米国に来たんだから、米国らしい肉を食おうではないかということになり、全米のチエーン店でラスベガスでも1,2と言う、肉のレストラン「Lawry's V.I.P.」へ行った。こまごました注文には私の英語では間に合わない、娘も苦戦している、そこでメキシコ人らしいモッソ(ボーイ)に声をかけ、スペイン語で話しかけたら喜んで応対してくれ、ようやくにオーダーが完了した。そしたら、なんと、そこへ日本人のマネジャーらしき黒いスーツの男がやってきた。”何でもっと早くこなんだよ”と言いたいところであった。ラテン系の人間は体つき、顔つき、肌色ですぐ分かる。英語でもたもたやっているより、この手の人種を探す方が手っ取り早いと思うようになった。 メニューを見ると肉は1人前4〜500グラムはあるらしい。そんな大きいのをそれぞれがとったら、とんでもないことになるので、2人前にするかどうしようかと思案していたら、ボーイが150グラムくらいにしましょうと言ってくれた。まさに適量である。とろりとした餡のようなソースをかけたプライム・リブは柔らかく、BSEの心配なんてどこ吹く風で舌鼓を打った。アルゼンチンの肉が世界最高だと信じていた私達であるが、米国肉もまんざらではない。米国肉は日本では殆ど食べたことがないので、貴重な経験であった。 <日本食> 日本食レストランは主要ホテルには大体あるし、アジア料理もいくつかあると聞いていたが、短い滞在ではあちこちの日本食を食べに行く時間などない。結局、泊まっていたベラージオ・ホテルのロビーでカジノに面した場所に在る「シンタロー」という、和食とは名ばかりの日本食レストランと、もう1軒、メイン通りから遥かに離れた場所にある、プレミアム・アウトレット(後述)の中にある「マキノ」と言う日本食のブッフェへ行った。マキノはアウトレトへ来る日本人ばかりではなく、外人の方が多いくらいである。大体1月の下旬なんて、日本人が一番少ない時期かもしれない。メニューは、やはり日本食とくれば寿司である。ネタも結構豊富で大きい。勿論握っているのは米国人だ。てんぷら、刺身、どんぶり物、味噌汁から家庭料理風の焼きそばとか、うどん、そばなどなどまで、結構揃っている。ブッフェだから自分で自由にとってくるのだが、片付けるウエイトレスは日本人、中国人、韓国人などの東洋人の女の子ばかりである。料理は自分でとるが、飲み物はウエイトレスに頼むのだが、いずこも同じで、お茶にしても、紙パックを入れた中ジョッキーくらいのコップに、ぬるいお湯を一杯にして持ってくる。 「シンタロー」と言う名は日本名には違いないが、どこから取って来たのだろうか、都庁の偉い人からもらったのか、それともオーナーの本名なのかしらないが、超一流ホテルの中のレストランの体裁を保つためか、店の概観は重厚だし、予約制だし、ウエイトレは慇懃だし、何よりも値段も超一流だし、行っただけでエリートになったような錯覚に陥るけど、肝心の料理がまことに変てこなものなのである。現地の日本人ガイドによると、一般の旅行者はほとんどホテル内の日本食レストランには入らないと言う。理由は唯一つで、高くて美味しくないからだそうだ。それ故に、和食を提供する店でありながら、日本語のメニューがない。唯一人いた中年の日本人女性ウエイトレスに聞いたら、日本人客が殆ど来ないからだそうだが、そんなもの1回作ればいいのだから、やっぱり、日本人を相手にしていない証拠でもあろう。コース料理を注文したのだが、先ず突き出しが、マグロの焼いたようなもの、あと、コロッケのできそこないのようもの、米の柔らかい寿司、てんぷら、小さなステーキなどである。本格的な日本食を期待する方が間違いで、むしろ、変わった日本食を食べた経験が又一つ増えたことを有難く思わないといけないのかもしれない。「ラスベガスのホテルの日本食レストランには入るな」 と言う現地日本人ガイドの忠告が身に沁みた。 【写真説明: 上、プライム・リブの塊り、とても柔らかい。 中上、ベラージオ・ホテルのロビー、奥はショッピング・プロムナードへ続く。 中下、エルメスの店頭の飾りつけ。 下、ベラージオホテルの池畔にあるカフェ・ピカソ・】 |
第4話へつづく |