このごろ思うこと (7)
--- 闇の増税の魔手 --- 銀乃 川太郎
喜寿もすぎてみると、もう日常に大きな望みもなくなり、毎日毎日が平穏に過ごせれば満足するようになってくる。幸い53年も連れ添った女房殿も健康で、私の好みの食事を黙って作ってくれるし、家の掃除も洗濯も決して手を抜くことをしない。ゴルフも自動車も太平洋越えの旅も、それにあの方もすっかり終わった今では、週に1,2回は囲碁に通い、映画、音楽会に出かけ、スペイン語圏の外人とのおしゃべりタイムを定期的に持ち、後はパソコンを触っているなどの気ままな暮らしであるが、そうした中でも、生活にかかわりがないにも関わらず無性に腹立たしく感じることがある。それを黙って胸にしまっておけなくなるのが、歳をとった証拠かもしれない。先日、厚生年金の今年6月から来年4月までの振込通知書が来た。予想通り、「長寿医療制度」の保険料の天引きはされない。この保険料と介護保険の保険料の合計が396,000円 (792,000円<2008年度>の半分) をオーバーする人は、天引きができないので、今まで通り、銀行で払うことになる。天引きの嫌な気分を味あわなくても済むのはいいが、銀行振込が黙って継続するわけではない。7月中に今年分の保険料が確定して通知書がくるので、改めて銀行へ行って引落とし手続きをしなくてはならない。そして、引落としが始まるまでの1,2か月は、直接払込まないといけない。難儀な話しである。ところが、これは、まあまあ、我慢できるとしても、これからお話しすることは、我慢がならない”闇討ちのような増税”の話しである。 我々年代の者は、奥さんも75歳を越えている人もたくさんいるだろう。そして、奥さんの年金は国民年金だけという人も多いであろう。この方達は4月の年金から天引きが始まっているはずである。私達が今年の確定申告を行うまでは、国民健康保険料は所帯単位だったから所帯主の自分が払う中に奥さんの分の所帯均等割りが含まれていた。そして、この額が社会保険料控除の対象になっていた。ところが、来年からは、奥さんの年金から天引きされた長寿保険料は、奥さん自身が払ったことにされ確定申告の控除対象にならなくなってしまう。奥さんは多分国民年金だけの所得では確定申告が必要ないので、結局、今年の確定申告まで控除されてきた奥さんの分は消えてしまい、結果として増税になるという奇怪な話しである。すでに一部の人は知っているが来年からの話しなので、まだ民主党も騒いでいない。速く騒ぎ出すことを願っているのだか。 (注)この問題は6月11日の朝日新聞によると、一定条件を満たした配偶者の保険料は、年金天引きではなく所帯主の口座から引き落としを検討していると出ていた。そうなると従来通り所帯主の負担で控除対象になる。 それと、増税の話しではないが、今までも長寿医療の問題点とされてきたことで、最近またぞろ騒ぎ出しており、6月9日のテレビ朝日の「テレビ・タックル」の中でも評論家の宮崎何とかさんが、公明党の坂口元厚生大臣に食ってかかってもいた、”個人と所帯の不明朗な解釈”である。 我々の所帯を例にとってみると、「長寿保険は個人単位だという理屈で、女房達は少ない国民年金から天引きされていながら、医者の窓口では、所帯単位がまかり通っていて、所帯主が3割負担だからと女房まで3割になっている。個人単位の保険なんだから当然1割でいいはずではないか。仲良く暮らしている老人所帯ばかりではあるまい、別居夫婦や戸籍上だけ夫婦なんて場合は、奥さんはとんだとばっちりを受けることになる」。という話しである。全くその通りだと思う。 自民党が国民の不満解消と称して小手先の負担軽減策ばっかり弄っているけど、75歳での線引きは感情論になっているので、金銭的対応なんかでは、不満は解消しないだろう。しかしながら、我々の年代者はこの長寿保険で今までの国民健保より保険料が減るというのも、また一つの現実であって、腹立たしさとは裏腹に珍しいことがあるものだと思っていたのだが、軽減措置の跳ね返りで、自分達の負担が今より増えることを心配している向きもおられるのではないだろうか。 (
2008.6.11 記)
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