Sugar & Salt Corner
No. 36
2008年11月30日
佐藤 敏雄

米国携帯電話事業者の現状

わが国の携帯電話は、10月末で1億500万台を超えました。ところでアメリカは?

アメリカの携帯電話事業は合従連衡が激しくて分かり難く、現状をフォローすることが困難です。つい先日発表された「Verizon Wirelessが申請していたAlltelの買収を、11月4日、FCCが認可した」との記事を見て、日頃から気になっていた米国の現状を(ごく一部ですが)調べてみました。

上記買収により9月末でVerizonの加入者は8,440万となり、米国第1のワイヤレス事業者となりました。7,490万の加入者を擁するAT&T Mobilityは2位に転落です。

Verizonの元をただせば、東海岸のベル系電話会社Bell AtlanticとNynex。これに英国のVodafoneが出資してできた会社です。AT&T Mobilityは同じくベル系のSouthwestern Bell、Ameritech、Pacific Telesisにたどり着きます。全国展開をする大規模な事業者としては、続いてSprint Nextel(5,050万)とT-Mobile USA(3,210万)があります。Sprint Nextel は昔のUS SprintとiDEN(integrated Digital Enhanced Network)というシステムを提供してきた旧Nextelが合併したものです。一方、T-Mobileは、米国で初めてGoogleのAndroid端末を販売したドイツの会社です。

この4社に次ぐ携帯電話事業者として、1,070万の利用者を有するTracFone Wirelessがありますが、これは南北アメリカで1億5,000万もの利用者があるメキシコの会社America  Movilの関連会社で、自前のネットワークをもたず、通信事業者から回線を借りて携帯電話サービスを行うMVNO (Mobile Virtual Network Operator) です。

米国の通信事業は、地域限定の小さな事業者が多いことが特徴として挙げられますが、今回のVerizonの買収成功で、加入者数が3,000万以下、700万以上という中規模事業者は皆無となりました。現在、加入者が700万以下(25万以上)の地域型小規模事業者としては、

Qwest, nTelos, US Cellular, Leap, MetroPCS, Cincinnati Bell, Centennial

の7社がありますが、Centennialについては現在AT&T Mobilityが買収交渉を進めている最中です。因みにLeapはCDMAを開発したQualcommが作った事業者です。

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以上のようなことから、大規模事業者と小規模事業者の格差は益々広がる傾向にあることがはっきりしてきました。上の図は米国の携帯電話事業者の規模を示したものです。2008年9月末での上記小規模7社を合計した加入者数は1,733万人で、全体に占める割合は4%に過ぎません。

7社の加入者数の年間伸び率は13.1%となっていますが、7社の内4社は下記のように加入者が減少しています。

U.S. Cellular :18,000人減。過去5年間で初めて。
Centennial  :1,000人減で、過去4年間連続の減少。
Qwest :45,000人減で、加入77万人は2005年第3四半期以来最低のレベル。
Cincinnati Bell :8,000人減。

LeapとMetroPCSだけは、年間伸び率がそれぞれ27.6%、32.3%と健闘しています。 因みに大規模事業者の年間伸び率は、T-Mobile USA:15.9%、AT&T Mobility:14.0%、VerizonWireless:11.2%、Sprint Nextel:−6.3%となっています。なお、米国全体でみた携帯電話の全人口に対する普及率は86.1%となっています。

関連ですが、アジア諸国ならびにヨーロッパでは、わが国では余り普及していないプリペイド携帯電話が主流となっているようです。先日APT通信事業者に対するワイヤレス研修でKECのお手伝いをした際にも、携帯電話の大半がプリペイドだという国の研修生がおりました。

* あとがき
ネットに出ている通信事業者に関する記事は、具体的な加入者数などについてまとまったものが無く、資料同士で必ずしも整合が取れているとは限りません。上の記述には筆者の独断でまとめた部分もあることをお断りしておきます。

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