Sugar & Salt Corner
No.16    2004年8月17日
佐藤 敏雄 

酒とスピーカー

前号は少し重過ぎましたので、今回は軽く愉快ですが、チョッと反省させられるお話を。

毎度飲んだくれてへまばかりやらかしている S&S 子ですが、こればかりは参りました。IEEE Spectrum 誌4月号 の記事です。

日本ビクターの桑畑敏勝さんは、20年来、理想のスピーカーコーンの材料として木材の使用を考えて来ました。 だって楽器は殆どが木材を使っていますよね。木材は音波の伝播が広い周波数範囲にわたって速く、 かつダンピング特性がよいので周波数応答が平坦になります。しかし木材を薄くシート状にしてスピーカーコーン の形状にしようとするとすぐにヒビ割れてしまい、これは不可能だと考えられてきました。

さて、5年前、同僚の今村さんと飲んでいるときの話です。今村さんはスルメをかじりながら、あの硬いものが 何故柔らかくなるのか不思議に思い、飲み屋の親父に聞くと、酒につけるんですという答え。早速、 まさかと思いながら木材を酒につけて試してみたら、何とこれがうまくいった!ウイスキーでは駄目である! 醸造された酒が、強度は変えずに柔軟性を与えてくれたのです。

さてそれから、このコーンには樹脂が沁み込まされ、高温多湿の状態でも変形しないようにされました。 今年5月から、卓上高級DVD用アンプETERNOのスピーカーEX−A1として発売されたようです。コーンの材料は樺の木、 キャビネットは固い桜材です。桑畑さんはその後めでたく定年退職されたとか。
JVCのホームページにもこの物語は漫画になって掲載されています。

皆さん!酒を食らってとぐろ巻いてるだけではいけませんねえ!
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