5月23日の A Week in Wrieless 誌に、嘗てわが KDD の盟友だった MCI について興味ある記事
が出ていました。
「戦争で破壊され尽くされたイラクの通信ネットワーク復興の一端として、MCIが
GSMネットワークを建設する契約
を得た」
この記事では、「最近、イラクで再建する携帯電話網はアメリカの CDMA 技術によるべしと言う計画が報じられて
いたけれど、それがつぶれて GSM というヨーロッパ方式の携帯電話が採用されてよかった」というヨーロッパ側
の見解を伝えながらも、あのように馬鹿げた粉飾決算をやって世界の経済に大打撃を与えた会社に対してこれは
何と甘い措置かと世論も怒っていると報じています。
同じ週に、MCI は5億ドルの罰金を払うことによって一件落着と最近の New York Times などが伝えています。
その一方で上記のような巨額な政府との契約を獲得しているのです。昨年ゼロックスがその不正経理に対して1千万ドル
の罰金を命じられました。それに比べるとこの5億ドルの罰金は格段に大きく過去最大のものです。
とは言うものの。。。。
MCIだって生き返る権利はあります。しかし、このようなリハビリが実に簡単に実現するということには
怒りを感じますね。
ということで、このMCIがこれまでに急成長した歴史を振り返ってみるとしましょう。
これはIEEE Spectrum誌の昨年八月号と最近のインターネット情報を取りまとめてみたものです。
MCIの栄光と挫折
巨大通信会社であったWorldComは38億ドルもの不正経理に関して捜査を受け、昨年7月破産申請を行った。
WorldComの悲劇は、嘗ての優良企業グローバルクロッシング、ドイツテレコム、AOLタイムワーナーなどを巻き込んだ点で
象徴的である。
WorldComの前CEO、B. J. Ebbers氏は一介の教師であったが、会社を興した後、競争相手の通信会社やインターネット会社を
次々と飲み込んで急成長を遂げた。
- 1983年: ミシシッピー州クリントン出身のEbbers氏、
格安長距離電話会社LDDS (Long Distance Discount Service)を創業。
- 1994年: LDDSは使わなくなった全米の石油パイプラインを利用した
光ファイバー会社WilTel(全米第4位)を525億ドルで買収。
- 1995年: WorldComと改名。
- 1996年: MFS通信を買収し、世界で始めて(現在でも世界最大の)インターネット
プロバイダーUUNetを開業。
- 1997年: 420億ドルでBTに対抗してMCIを買収し、世界最大の総合通信会社となる。
- 1999年7月: WirelessOneを買収し、2GHz帯無線LANの権利を確保。
- 1999年10月: SkyTelを合併。
- 2000年: 大通信会社Sprintの買収を企画していたが、6月に至り規制当局の反対によりこれを断念。
- 2002年4月: Ebbers氏、自社からの個人的ローンに関し証券取引委員会の捜索を受けCEOを辞任。
- 2002年6月25日: WorldComは2001年と2002年第1四半期の財務報告を修正すると発表。
内部監査の結果、過去5四半期にわたって経費の一部を設備投資費として計上
していたことが明らかとなったため。このような不正会計処理がなければ、
2001年と2002年第1四半期の純損益は赤字となる。同日CFO(主任財務役員)を解雇。
- 2002年7月: 破産申請。NASDAQ取引停止。一部政府機関との契約失効
。
- 2002年12月: 米商務省から3.6億ドル、10年契約のサービスを受注。世界各国にある大使館等
に対し、国際専用回線、衛星、IP、ATM関連サービスを提供する。
- 2002年11月: 前Hewlett-Packard社長のMichael Capellas氏を新たなCEOに任命。
WorldComはこの不名誉をかなぐり捨てるためか、最近再びMCIの名前を復活させ、上記のような
大型契約を獲得して生き返りつつあるようですが、やはりこれを釈然としない人達が沢山いるようで、
www.boycottmci.com なるホームページができています。そこでは、
- 投資者に対し1760億ドルの損害を与えた。
- 市場システムへの投資者の信頼を破壊した。
- 何万人ものまじめな社員をレイオフした。
などが取り上げられ、更に
- ブッシュ政権はこの企業悪を告発しないどころか、FCCは未だにMCIの会社運営を許している。
- 大枚10億ドルの納税者の金で国家機関との契約を更新している。
- 証券取引委員会に対し、ささやかな罰金でMCIと和解させようとしている。
などと弾劾しています。
以 上