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6−2 プランの再構築

前回にて言及した『2日間』の案は本企画の最終的な『成果』であって、私はそれを恰も実行するが如き気分で詳細なスケジュール表を作成した。その表は、このHP版では掲載を省略し(数字の羅列で、オモシロ味を欠くから)、大まかな諸元のみを、実行旅程のそれと対比して次に示そう。
             前回実行  机上再旅行
    所要日数:     3日     2日
    乗換え回数:   20回    15回
    利用路線数:  17路線   16路線  徒歩回避により+3、錯誤修正で−4
    要徒歩区間:   4箇所    2箇所
    要徒歩距離: 約18キロ   約6キロ
    所要交通費:  15,010円   16,150円  徒歩 → バスによる増と、錯誤修正の減
6−3 ある疑念 −近鉄特急の性格−

ところで、さきの実行旅程において、その終わり近い時点で気になった一つの問題点を考える。
本計画を支える『へそ曲がり理念』は『長距離旅行を本来の対象とした機関を忌避し、地域の生活路線のみを用いて旅をする』ことであった。旅を進めるなか、このことはつぶさに実感し得た。乗りあわせた乗客が(その風貌、所作等から)すべて土地の生活者だったからである。
ところが最終段、三重の白子駅から近鉄の大阪行き特急に乗ったときは様子が少し違っていた。全席指定のリクライニングシートに納まった乗客の多くは、よそ行きに着飾った行楽客のグループやスーツに身を固めてアタッシュケースを携えたビジネスマンなのであった。この路線は明らかにツーリスト路線であった。
近鉄は大手私鉄の中でも抜群の規模を持つ。ネットワークは2府4県に跨がり、他の全ての私鉄を凌駕する。JRに次ぐ、あるいはJRと並ぶべき鉄道といえる。利用のパターンもJRとの近似性が目につく。JRを忌避するならば近鉄も排しなければ筋が通らない。近鉄の使用は誤りではないか? ルール違反? ではないとしても、その精神を明らかに逸脱している。
たかが遊び事なのだから、そんなにムズカシク考えなくても・・・、というかもしれない。だが、ちょっと待ち給え。アソビだからこそ、問題にすべきなのだ。このイベントは、峻厳なルールを自ら創出し、それを、如何にして、何処まで達成し得るかを試す知的遊戯である。さすればルールは厳正、かつ論理的でなければならない。それを曖昧にしたのでは『遊びのエスプリ』を根幹から否定することになる。
近鉄の特急を避け、急行以下を用いることを考えよう。近鉄も、この大阪線特急は特例であって、他は概ね生活路線と見做し得る。だが、この論理に依るならば、JRは新幹線だけを忌避し、在来線の鈍行は許容しなければならない。ルールとしてそのように決めれば、それでいいのかも知れない、が、それではこれまで進めてきた行為の土台が音を立てて崩れてしまう。JR鈍行に依る大阪行きなら難なく1日で終ってしまう。鉄道マニヤの私はとうに実行済である。これにはこれの面白味も意義もあるけれど、それは本件とは別次元に属する。
ここまで積み上げてきた成果(?) は、なんとか大義名分をつけて保全したい。妥協の道を模索しよう。地域生活路線の使用に際し『特別料金の必要な車両はダメ』という付加則はどうだろうか。これなら、近鉄の特急を急行に変えるだけですむ。特急との時間差は約30分に過ぎず、旅のスケジュールへの影響は小さい。
だが待てよ、急行電車に2時間半も詰め込まれるなんて、どうもおもしろくない。ローカルバスの乗り継ぎに明け暮れたあと、旅の終わりはやはりデラックス車両で寛ぎたい。 更なる妥協として、既成行為を追認するリクツを考えよう。鉄道網/企業体を巨視的な本来属性のみに着目し、JRを全国網、他の全私鉄を地域網と定義づける。JRは企業体としては分割されたが網の運用・営業の全国一貫制は厳に保全され、実質的には『国鉄』である。本企画において忌避すべき対象はこの『国鉄』的性格である。他のすべての私鉄は大筋にてローカル網であって、一部客種の異同は意に介するに及ばない。・・・・。

・・・何のことはない、散々回り道をしたあげく元に戻っただけである。 近鉄をも忌避して、名古屋から近江路をバス乗り継ぎで辿ることも脳裏には浮かんだ。多分、鈴鹿峠あたりでデッドロックに乗り上げるだろう。さすがの私も、今更これを実行する気は起きなかった。


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