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韓国東北の旅

ASUKA
束草港岸壁のクルーズ船
ASUKA

韓流ブームに乗って9月下旬、38度線に近い日本海(東海)側の「束草(ソクチョ)」と云う港町を訪ねた。古くから北洋漁業の基地として栄えた漁港とのことだが、近年は映画ドラマのロケ地が多い江原道に属する土地柄でもあり、海・山・湖・温泉の観光リゾート地として脚光を浴びている。朝鮮戦争直後に、38度線を越えて南下した人々が、北への望郷の思いで束草の地に定着し人口が急増したと云われる。現在は人口4〜5万とか、高層ビル(ホテル・マンション等)が並び、道路等のインフラも整備された近代都市の趣である。市街の北と南に、日本海につながる潟湖(北側の永郎湖・南側の青草湖)が広がり、また西方の山岳地帯には、国立公園「雪岳山(ソラクサン)」の奇峰が連なる。

景勝の地として既にご存じの向きも多いかと思うが、筆者にとっては初めての旅先、バスツアーに参加してその一部を探策し印象を深めた。若干のスナップ写真とともに紹介しよう。

◆ 吾らはクルーズ船で日本海を横切り直接、束草に入港した。この港は、近年盛んになった北朝鮮への観光の玄関口でもあり、有名な金剛山や白頭山の観光地を結ぶ大型フェリー定期船が発着しているとのこと。国際旅客ターミナルの施設もあるらしいが、吾らは、船内でパスポート審査、岸壁で臨設のX線手荷物検査を通って入国手続きを終え、直ちに束草観光バスに乗り込んだ。

参加したバスツアーは「統一展望台と雪岳山コース」、まずは38度線の見学に向かう。束草港から北へ凡そ50km海岸にほど近い小高い丘の上に北を臨むガラス張りの「統一展望台」がある。説明によると、眼前に延びる白砂の海岸線から突き出た緑の小島が38度線に当たり、南北にそれぞれ2kmの幅で非武装地帯が設けられる。海岸沿いに北上する道路も見える。目下工事中の南北貫通自動車道とか。

点在する有刺鉄線の固まりを除けば軍事施設も警備兵も見えない、いたって長閑な休戦ラインの景色ではある。この展望台の丘陵全体は公園のように整備され、資料館・記念碑・土産物屋・食堂なども設える。丁度日曜日だったせいか、観光客や家族連れで賑わっていた。南北統一の願望を象徴する展望台である。

北方を望む
北方を望む
日本海を望む
日本海を望む

◆ 雪岳山公園(登山口)までは束草港から20km程と近い。バスは統一展望台を後に海岸線を引き返し、バイパスを西へ雪岳山公園に向かう。公園の手前で行楽の渋滞に巻き込まれ、予定より半時ほど遅れてホテル「ケンシントン」に到着。早速お昼の「石鍋山菜ビビンバ」本場の味に舌鼓を打つ。公園内のロープウェー乗り場までは徒歩で約10分、ハイカーの群れに混じって川沿いの緑道を急ぐ。トレッキング姿の若者達、ハイキングの家族連れも多いようだ。

ロープウェーは2台の大型ゴンドラがピストン輸送で、標高800メートルの、そそり立つ「権金城(クォングムソン)」駅まで運んでくれる。さらに徒歩で展望台まで岩石の凸凹道を30分程の登る。周辺に切り立った花崗岩の峰々が聳え、眼下には公園口のホテル群、渓谷の流れを集めた本流「双川」の先に束草市街、日本海が広がる。息を呑む素晴らしい眺望である。雪岳山は群峰の総称で、標高1,700メートル余の大青峰を中心に奇峰が連なる。渓谷、飛瀑、古寺などを巡る登山ルートが幾筋も整備されているようで、登山口の公園は多くのハイカーで賑わっていた。

露座大仏様
雪岳山公園の露座大仏様
雪岳山の峰々
展望台から見た雪岳山の峰々

◆ 夜は本船のグランドホールで地元舞踊団によるローカルショー、華麗な扇の舞や太鼓踊りを鑑賞。本船は22時、束草の岸壁を離れて穏やかな日本海を南下、対馬・五島列島のコースで九州南端を目指す。秋の短い束草スケジュールでは、韓流ブームを実感するほどの余裕はなかったが、見事な景観、穏やかで豊かな土地柄に触れて平和を思った。

歴史・文化に差異はあるが、古代から交流の深い、最も近い国同志、こだわりのない政治・文化の交流で、韓流・日流の一層の深まりを期待したい。

< 遠藤栄造 2005年10月記 >


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